月刊コミックビーム2017年6月号

  • 表紙は『狂気の山脈にて』で、ク・リトル・リトルがババーンと描いてあるところにアオリが「常識に囚われない者たちへ」「YOU ARE NOT ALONE.」というね。

●田辺剛『狂気の山脈にて』/一話まるまる異形たる先人類史(まだ続く)。真相の嫌な想像を、絵力の前にさらっとモノローグで流す、矮小化してみせる良さよ。
●原百合子『熱海の宇宙人』/で、↑の内容に続けて掲載の読み切り。異邦人のもたらすファンタジーによる郷愁をそつなく。
桜玉吉『温泉ゴールデンウィーク』/読み切り6ページ。山中の家と温泉地の距離感というのは、私も実家の立地的にわからんでもない。さすがに露天はないけど。
●伊図透『銃座のウルナ』/脳内映像が少女漫画チック、と一瞬思うがカエルなんだよな。平穏と不安を繋ぎつつの場面転換が絶妙。絵の強さと吹き出しの位置取りの巧さ。
松田洋子『大人スキップ』/人生の苦味を知る、哀しくもいい奴らだ。
カネコアツシ『デスコ』/トラップの山たる城ならば最終手段は自滅か。ざっくりリーパー削減されたが、さて。
●おくやまゆか『むかしこっぷり』/戦時下の思い出、鶏。いがぐり頭に下駄履き、でも薪割りの時は草履である。さくらももこの読み切りにも小学校の鶏小屋掃除の話あるけど、だいぶ芸風もとい死生観違うな、そりゃそうだ。おまけマンガでナメクジのナメヨちゃん、かわいい。
●久野瑶子『甘木唯子のツノと愛』/三号連続掲載の二話目、なのだが、一話目からするといきなり上手くなったように見えて、あれ?オノマトペの入れ方も背景省略もコマまたいでの場面分割(セリフの割り振り、視界の転換)も全体通しての伏線の置き方も作者の個性たる光源表現もよくなってる、よな。物語としても前回の背景語りから、今回は外部の再認識、人との接触によるその対置、と好みの展開。これが私の好きだった久野酸素作品なんだ!と素直に喜ばせていただこう。
●conix『青高チア部はかわいくない!』/教えるのは難しい事だが、この先輩達はそれ以前の感がな。一年生トリオの組み合わせのよさが光る。そのネタバレは仕方ない、うん。
ジュール・ヴェルヌ、倉薗紀彦『地底旅行』/物から痕跡へ、文字から名前へ、と思考の連鎖する熱さよ。
須藤真澄『どこか遠くの話をしよう』/正味ここまでの遠未来、ディストピアを出してこられるとは想定外。靴が語る知識の詳しさはつまり、中古品であることの指標か。連載当初にナナカド町綺譚を連想した旨書いたが、この設定の上だと、背景として語られてきた“放浪”の内実が相当違って見えてくる。それは作者のこれまでの作風からしても、であるし、その中でも人の感情描写の優しさは通低していて、だからこそ悲しく。
●谷口菜津子『カロリーファイターあいちゃん!』/読み切り。ヒーローものパロディも色々だが、こちらはコメディ少女マンガベースと言うべきか、しかして別離と友情と成長である。個人的にジュウマンは最高だったんだけどね…。
上野顕太郎『夜は千の眼を持つ』/○休シリーズSF編後編。元ネタはノブナガンキューティーハニー僕だけがいない街リュウの道。門松冥土、あるときは破壊僧、タイムスリップ設定とこの辺りのセンスの巧さ。石森断ち切りでノドまで使うから執筆日記入は前段と。
おおひなたごう目玉焼きの黄身 いつつぶす?』/配膳。 マナーと効率という問題が、人生の選択とリンクした形で現れうんたらかんたらギャグ漫画。巻末コメント欄にてワードバスケット大会成績報告。
羽生生純『恋と問』/流されるままのようでありつつ、メインキャラを描きたい、という欲求は問側にもあるのかね。恋糸はその点が二重構造なわけだけど、しかし羽生生作品における作家キャラは大体そうだしな。
●市川ラク『わたし今、トルコです。』/人に会えばのう。
山川直人『小さな喫茶店』/ずる休みはロマン。教え教わり、親子の日常の一幕としてあるのがよい。
やまじえびね『レッド・シンブル』/最終回。生き残ったが故に囚われ続けるか。原罪の物語でもあったのかね。お疲れ様でした。


  • あと編集部からプレゼントが届いたけど、宛名も差出人名も手書きで初見でなんだかドキッとしたよ!