コミックビーム2017年12月号

  • 22周年記念号、ということで表紙はインタビューコーナー担当でもある姫野たま。ちょっと前までヒロインづいていた表紙が今度は実写づいてる!今月は読者プレゼントの画像も姫野氏。前号では表紙が青柳翔なのにプレゼントはおおひなた絵だったんだ、仕方ない。

 

  • 巻頭企画として夏目房之介と姫野氏の対談、というかほぼ夏目氏の講演状態。マンガ基本史ですな。私的解釈による触れられている要素でいうと、“2D”としてのテキスト論、疎外感としての内面(という共感)あたり俺も好みなので、チャンピオン感想では浦安鉄筋家族BEASTARS(以前は猫神じゃらし!と実は私は)、ハルタ感想ではダンジョン飯とA子さんの恋人とサーカスの娘オルガ、といった作品に対して褒めたがりなわけです。

毎度!浦安鉄筋家族 22 (少年チャンピオン・コミックス) BEASTARS 5 (少年チャンピオン・コミックス) 猫神じゃらし! 4 (少年チャンピオン・コミックス) 実は私は(22) (少年チャンピオン・コミックス)
ダンジョン飯 5巻 (HARTA COMIX) A子さんの恋人 4巻 (ハルタコミックス) サーカスの娘オルガ 1巻 (HARTA COMIX)



三宅乱丈イムリ』/“交渉”に向けて情報と意志が錯綜する。ここまでの物語を背負っているからこその密度だな。まきにまかれた伏線が、いよいよ回収に入っている感。

おおひなたごう目玉焼きの黄身 いつつぶす?』/極細箸効果(開ける世界)。美味しんぼでは高級毛抜きで魚の小骨取る話とかあったけど。

上野顕太郎『夜は千の眼を持つ』/RHYTHMシリーズ、集団と喝采。このシリーズは本当、マンガとマンガ表現への愛あってこそなんだけども、今回は「祝‼ビーム22周年‼」と掲げてのこの絵面というのもあってグッときちゃったよ。ゴルゴに始まりちばてつやに終わるモブ、か。ザッドランナーからコブラ三原順からあすなひろししりあがり寿から大島弓子、といった接続の図もなぁ。とまあ、感慨抜き出してみるとなんのこっちゃだけども、その集積により見せる個別の内圧よ。個人的に最近の「ワーワー」で印象残ってるのは『実は私は』かな、頻度はドカベンの方が多いけど。

山田参助あれよ星屑』/見捨てられた者。この原点からこれまでの物語につながる、という重さよ。

カネコアツシ『デスコ』/さすがにこのまま見た通りにってことはない…よな。

●伊図透『銃座のウルナ』/セックスセックス(言い方)。この二人のキャラクターらしい体力勝負って面もあるよな、と刃牙SAGA連想するのもなんだが。高揚・酩酊という描写の近さでは田中ユタカの作風がやっぱり俺的には連想されるんだけども、田中作品の場合はあくまで瞬間としてのそれに着地するからこその匿名性と普遍性なのよな。これとかSCATTERの主人公においては、セックスは個人の物語中に存在する、いわば実存なのよ。チュリッカはまたも残される立場になるんだろうか。

●市川ラク『わたし今、トルコです。』/顔と言葉。いずれ外づらがあるとはいえ、冒頭のエピソードは強い。映画版テルマエのキャストの特殊性とは。日本の歌をネタに外国版空耳アワーって企画も、昔あったな。/単行本は高額装丁路線でいくのね、ハルタのモテ考同様。こういう形での実録エッセイ路線単行本(ほんわら系レーベルとか)の需要はなんとなくイメージできるんだけども、電子書籍市場でもその点通用してるんだろうか。

●おくやまゆか『むかしこっぷり』/これはしみる話だなあ。変わるべくして世界は変わるも。

●conix『青高チア部はかわいくない!』/扉絵エロかわいい。前回からの部活間折衝編が楽しくてしかたないのも、私自身はこれ系の熱血に無縁の学生だったからてのもあるかもしれん。自分たちがメインとなるハレの舞台で、しかし協力者は二軍、自軍にも不安要素を抱え、それでも団結を目指す。やっぱりおもしろいよ、これ。

桜玉吉『その日』/読み切り。この内容でサブリーズ最終回と同じタイトルというのも。私もコンビニバイト中に客がぶっ倒れた経験2度あります。

新井英樹『KISS 狂人、空を飛ぶ』、小林多喜二唐沢なをき『僕らの蟹工船』/男同士のキスシーンという点では同じだけども、色々と落差あり過ぎ。

田中貢太郎近藤ようこ『蟇の血』/恐怖とユーモアの端境というか。状況としては、女に迫られる男という図なのがまたね。

須藤真澄『どこか遠くの話をしよう』/弥次喜多 in DEEPにも似たような村あったな、と思ってしまったが。希望があればこそ、人が思いを共有できればこその「半分」の光。次回最終回。

山川直人『小さな喫茶店』/想いはいつだって一人相撲なのかもなあ。

●H.P.ラヴクラフト・田辺剛『狂気の山脈にて』/最終回。これだけ絵の迫力で読ませてきた作品ながら、最後は見ることの叶わない、という重み。宇宙から一冊の本へ、という幕引きが実にいい。語られた世界、という神話なのだよなあ。お疲れ様でした。

松田洋子『大人スキップ』/最終回。いいファンタジー、現実と向き合うおとぎ話であった。これは百合クラスタに押せるかもしれん、違うかもしれん。お疲れ様でした。




  • インタビューに出てる田辺剛のマンガ制作、セリフの当てはめは編集者に一任ってすげえな。
  • 相変わらず市橋俊介コラムのSの話はひどい、笑うけど。
  • 会員ページ広告隣が実写氷菓だったり、編集総長の隣が李さん一家だったり。