月刊コミックビーム2016年12月号

森泉岳土『報いは報い、罰は罰』/新連載。館が舞台、内面の闇、というと初期にも似たモチーフの作品あったが、本作はホラーになるのか。
●伊図透『銃座のウルナ』/戦場の殺し合い。計略により追い詰められる側となると、この感情の見えない異形はより恐ろしく映る。(だが実際は、という内実も物語として含むのだが。)描かれるディティールは痛み重みを伴いつつ、いわゆる少女漫画の内面描写的な画面構成も見てとれ、緊迫感を盛り上げるおもしろい効果をあげている。
桜玉吉ダンシングヒーロー』/読み切り。田舎の山の中の出を自負し、ムカデに刺されたことも靴や服に入っていたこともある私だが、クモの巣にかかってるのは見たことないなあ。うん、それで終わるバイタリティじゃないよねムカデって、という納得のオチです、はい。
三宅乱丈イムリ』/この行動ができたのは、ラルドに付き従っていたイマクだからこそだろうな。ひとまずよかった。術の差違はどういう展開を生むかねぇ。ユーモア枠のチムリも、ちゃんと視線の移動線上におかれます。
朝倉世界一『おれは たーさん』/霊や死という概念を語りによって超技術に、とこれが主題の一端ではあるんだろうか。
いましろたかし『新釣れんボーイ』/自己言及も一周してるというか、単行本化に際して読み返したのかな。最終ページのアオリ(レスポンス)は編集総長らしいことで。
●H.P.ラヴクラフト・田辺剛『狂気の山脈にて』/雪の嵐がすごい絵面。描いている、のだよなあ、これ。
羽生生純『恋と問』/ぶはは、ひっでえ。いやしかし前作も結末の印象でつい美化しちゃってるけど、考えたらこれくらいの俗情ぶりは込みだったからね、うん。キャラと状況の自覚というシニカルさと直情的萌え(?)の2×2、ときて。
新井英樹『SCATTER -あなたがここにいてほしい-』/今回はこれを読んでて泣きそうになる。愛で、その物語で立ち向かうのだ。このグロテスクで下品で絶望的な世界の中、怒りで覚悟で陶酔でそれをぶちまけるという、もう文脈だの構造だのじゃねえ、イズムだ体温だ激情だ、この美しさに立つ(二重の意)為の物語だったという、ね。ビッチの目がな、これが新井キャラだよな。次回最終回。
松田洋子『大人スキップ』/あら、なんだか『たそがれたかこ』っぽい展開じゃない?(わくわく。)こちらはスタートにあるわけだけども。
上野顕太郎『夜は千の眼を持つ』/現行掲載作家の前々作の作中作のパロディ、映像化を機に。ドラマ版ママゴト、よかったです。今回はまず趣旨を解説、とこのメンツに上北ふたご入ってるのがもうギャグだけど。プリキュアネタも漫画版でのそれは初かな。必殺技がおしくらまんじゅうってアニメ最新シリーズもチェックしてるし!俺もその辺はまだ見てたし!/単行本新刊は再び厚め仕様、と前巻あとがき読んだ身としては思う所あるけれど、とまれ楽しみ。
山田参助あれよ星屑』/予想通りの展開に!わざわざ風呂に入らせる一コマがディティールだな。絵吹き出しと濡れ場(未遂)へのシームレスさは滝田ゆうっぽい感。これもまた活劇の一幕、時代の風景。
山川直人『小さな喫茶店』/「くちくなった」ってひさびさに聞いたな。そのページ内を「とっ とっ」と笑顔で歩いてハッとして、次ページから始まる哀しい回想。消える店といえば、私としては本屋がねぇ。ビームも頑張ってほしいもんです。
三家本礼『血まみれスケバンチェーンソー』/え〜、マジか。この見開きの爆谷はこれまでの積み重ねあってこそなんだが、しかしなぁ。
須藤真澄『どこか遠くの話をしよう』/袖の使い方。この伝達も、動作と吹き出し併せて見られる絵におさめるのが流石だ。外界でのそれの存在も知る、と。
竹本泉『夏に積乱雲まで』/最終回。単行本一冊分、伏線回収オチといえるか。異世界の日常として幕。お疲れ様でした。
須田剛一竹谷州史『暗闇ダンス』/最終回。目的を果たしての、帰還?また斜め上に振っ切ったなあ。テレビゲームの演出として見せられたら、という話かもしれないが。楽しかったです。お疲れ様でした。


  • 松田洋子インタビュー、自作解題はおもしろいね、やっぱり。
  • コマンタレビーマーはB・トレヴンという人物。おもしろい。
  • 編集総長コラムは、ニコ生のマンガ実況について。よかったですよ。次回の題材は上野顕太郎新刊、見るよ、暇だからな!
  • 次号より、市川ラク、横山旬新連載。
  • 表4広告にアイドル載るとか、本当カドカワ系列なんだなあ感が。昔はビーム裏表紙に載る女の子といえば、ライアーソフトのヒロインくらいなもんじゃった(たぶん)。