年末ご挨拶

おはなし、に身をゆだねると、自然に「自分」は後退する。いらぬ自意識、功名心、おれがおれが、の煩悩は昇華されてゆき、ただそういう語り口にゆったりと包まれ、包まれてゆく分、いつ、誰が、どこで、何を、といった、現世の現実の位相からどんどん勝手に遠ざかってゆくことができる。敢えて言う。そういう水準の〈リアル〉、そういう種類の現実のとりとめもなくどっしりした手ざわりをこそ、マンガに限らず、あらゆる表現は回復するべきである。それは、われわれ不特定多数の読者にとってのミッション、でもある。
世直し源さん―ヨシイエ童話 (1) (竹書房文庫)
(業田良家『世直し源さん』所収、大月隆寛による解説文より。)

と、いうわけで。今年、“今”と向かい合う際に、高野文子が先人の手記を、新井英樹が原作小説を、開き、再編するという形で作品づくりに向かった、「おはなし」に身をまかせつつ体現するという選択をしたのは、俺の中ではまごうかたなきシンクロニシティなのでした。
ドミトリーともきんす 空也上人がいた (IKKI COMIX)



そんなわけで。不肖の身を思想を「再話」に大方やつしてきた、なんとかリアルを心がけてきた当ブログもまもなく2014年を終えます。
ぶっちゃけ『ドロイどん』単行本をアピールするぞ!の一念で更新数増やして、だらだら引きずってきた1年だったので来年からは更新数減らします!定期感想はこのまま続けたい。一年間のいずれかの瞬間にて読んでいただいた方ありがとう!越智善彦『ドロイどん』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)をよろしく!よいお年を!