ハルタの今年1年をふり返る

当ブログで定期感想を書いている、「ハルタ」誌の2014年をふり返りたいと思います。
当ブログの感想記事は掲載作品のうち、私があえて言祝ぎたいと思ったものについてのみ言及する、批判しか浮かばない作品については基本スルー、という体裁をとっております。つまり言及回数が多い作品こそ、私の評価は高いわけです。
以下、2014年に出た全10号(volume 11〜20)に掲載された連載作品を、感想記事中で言及回数の少ないものから順に並べ、感想を述べております。基準となるそもそもの掲載回数自体が時期により異なり、さらにハルタの場合は連載形態までもが作品ごとに異なるわけですが、その辺はご容赦をば。
なお企画の性質上、基本的に賛辞しか載せない定期感想とは異なり、批判的な私見もふくまれております。もとより作品数が多いため、それらの多くは定期感想同様スルーという形になっております。かような否定的記述をいとわれる方は、以下読むのをご遠慮ください。





言及回数1回

  • 高橋拡那『レイチェル創々』(volume 16より連載開始)
  • 福島聡『ローカルワンダーランド』(volume 20より連載開始)
  • 加藤清志『THE TOWN』(volume 20より連載開始)
  • 犬童千恵『碧い瞳のホルス』(volume 20より連載開始)
  • 窪中彩乃『華麗なる虚偽』(volume 20より連載開始)
  • 中村哲也『魔街の坂』(volume 11にて連載終了)

『魔街の坂』感想をアキバBlogに拾われたぜヒャッハー!(連載時感想しか書いてないのに!)というのはさておき。中村哲也はやっぱり上手い。ベタなファンタジーを画力と構成とで物語に仕上げてきててよかった、燃えた。ビジュアルの発想が立体的、てのとおもしろい画面構成してる、てのは地続きの才能かねぇ。福島聡は1年ぶりに帰ってきてくれて、本当うれしい。読ませる読ませる。
他の作品は特になし、始まったばかりのもあるし。いやまあ好みでしかないですよ、しかし俺の中に文脈として落ちてこないことには、対して想い乗せて言葉発することもかなわんわけです。



2回

  • 久慈光久狼の口 〜ヴォルフスムント〜
  • 設楽清人『タイマンズ』(volume 13より連載開始)
  • 高江洲弥『首花は咲きゆく』(volume 18より連載開始)
  • 浜田咲良『転職坊主』(volume 19より連載開始)
  • 夏本満『保健室の黒便り』(volume 13にて連載終了)
  • 紗久楽さわ『かぶき伊佐』(volume 14にて連載終了)
  • 高橋那津子『紅い実はじけた』(volume 20にて連載終了)

『保健室の黒便り』は好きだった作品。人の優しさを見せる場面作りがとても心地よかった。『かぶき伊佐』はメディア芸術祭推奨作品入り、おめでとうございます。時代や世界が物語の俎上に乗ることで、ぐんぐんおもしろくなっていった。美意識のキメ方も終盤は堂に入ってましたな。
『首花は咲きゆく』は、作風の奇妙さで秀でていた新人の連載。楽しみ。『転職坊主』は、ドタバタコメディ描いてきた作者の持ち味が変な形で出ていて気になる。『狼の口』は最終盤が結構続いてる。



3回

  • 明仁『ストラヴァガンツァ 〜異彩の姫〜』
  • 長蔵ヒロコ『ルドルフ・ターキー』
  • 渡邉紗代『少年の名は』(volume 19にて連載終了)

絵と内容で、ある程度は確実に当たる、とわかるんだが個人的にどうも食指が。



4回

休載中作品が並んでしまった。女の子かわいくて、楽しくてよいですよ。どちらもミッションに向かうって話ではあるのか。速度も道具立ても異なるけれど、ある種のゆるさの口当たりは近いかもしれない。



5回

ギャグ2作品。『鋼鉄騎士シュヴァリオン』は設定いじくるって話で、『坂本ですが?』は設定という物語いかに作り上げるかって話。引いた視点とお約束の挿れ方が作家性なのよね、どちらも。



6回

  • 八十八良『不死の猟犬』
  • 白浜鴎『エニデヴィ』
  • 宮田紘次『犬神姫にくちづけ』
  • 丸山薫『事件記者トトコ!』
  • 空木哲生『鴨の水かき』
  • 原鮎美『でこぼこガーリッシュ』(volume 17より形態変更)
  • 梶谷志乃『想幻の都』(volume 12より連載開始)

『想幻の都』は、読み切り群を好きな作家だったので新連載を喜んだ。正直内容には面食らったが、この画力で語られる世界の重みがよい。『エニデヴィ』『事件記者トトコ!』『鴨の水かき』も、絵と作品性の相乗効果というのは共通か。
『不死の猟犬』『犬神姫にくちづけ』は安牌感、わんわん。『でこぼこガーリッシュ』は連載形式を4コマからストーリー漫画に変更。一長一短という印象がいまだ強い。



8回

乙嫁語り』は定番ですからな、2回の欠番は『シャーリー』描いてたわけだし。『ヒナまつり』は・・・俺、何か語ってたっけ?(えー。)あ、昔よりは明らかに言及数増えてるはずです。以前はつまんないと思ってたもの、俺。(えー。)キャラが立ってきたってことかもしれん。
『A子さんの恋人』はすごいです。表現に対するこだわりと、それを一見これだけマイルドにユーモラスにアウトプットしていて、しかし内容はきっちり感情持った人間どものうごめき空間になっている。すごい。



9回

いやあ、『補助隊モズクス』は本当好きだった。うまく畳みきれてないって思いも正直あるけれど、熱と速度と重みに魅了されっぱなしだった。絵も構成もキャラも物語もカッコよかった。
カプチーノ』はあれよ、いちゃラブラブコメ見せるぞ、てな方針決めたあとにどうアウトプットでおもしろがらせるかっつうね、そこで見せるコメ部分にちょいちょい表現としての絵のオノマトペの構成のおもしろさ乗っけてくるじゃないすか、そこ魅了されてそこ入り口にね、おもしろいよ!
ハクメイとミコチ』はカッコいいんだよ、世界が、かわいいでなくて。世界の鎮座のさせ方がキャラのたたずまいが食ネタがカッコいい、楽しい。
乱と灰色の世界』も最終盤。キャラのかわいさとビジュアルイメージ見せる絵力がすてき。
補助隊モズクス 3 (ビームコミックス)



10回

えー。こんな私が『健全ロボ ダイミダラーOGS』を全話言及なんて・・・。(ひっでぇ。)色々と設定登場したり無茶苦茶なショートギャグやったりと、語ること多かったのは確かか。今年はアニメ化もされましたね、最後カッコよかったのはずるいよ!
ダンジョン飯』はその才能で注目集める九井諒子、初の長編連載。メタギャグって分類にはなるんだけれど、そこで設定や展開付記して物語へとコメディへと昇華させる手腕が絶妙。この発想と描写力はすげえよ。



読み切り
今年はなんと言っても木村みなみラノベ男とドーナツ女』(volume 13掲載)『白木くんの死角』(volume 16特典小冊子掲載)2作での抑制された筆致で描かれる人間模様が、ツボにドハマりした。この構成の丁寧さを、“普通”へと向かう視線を見よ。静かな作品であることの人間味を見よ。
和田隆志『ダンサーの記録』(volume 11掲載)『心中無理』(volume 19掲載)のはらむ黒さも、誌面の中で異彩放っていた。端正な描線と造型による語りの上手さ。連載持った高江洲弥『ある日森の中』(volume 12掲載)の耽美とタナトスも印象的。進美知子『かいだんばなし』(volume 18掲載)もこった設定、こだわった絵面でまっとうなヒューマンドラマ見せてくれてよかった。
新人以外では、長崎ライチふうらい姉妹(volume 20掲載)が不定期掲載作品として復活。シリーズ連載では、森薫『シャーリー・メディスン』が2回、室井大資『秋津』が4回掲載。中村哲也も読み切りを3作発表。どれも楽しく画面映えする内容だったが、個人的には『坂がちガールズ』(volume 19掲載)が最高だった。
意外な作家としては山本ルンルン『オリビアのいる世界』(volume 18掲載)が登場。さすがの構成力と話法を見せつけてくれてグッときた。またvolume 15の特典小冊子としてなかま亜咲『カニメガ大接戦』が収録される。小気味よくずらしオチの決まる4コマ作品でおもしろかった。



以上。