『ハウアーユー?』

ハウアーユー? (フィールコミックス)

ハウアーユー? (フィールコミックス)

Sunny Sunny Ann! (KCデラックス モーニング)
前単行本『Sunny Sunny Ann!』の卓抜なるパワフルさにうっとりさせられてから2年、山本美希の新刊である。
前作では強く自由な風来坊女性の姿が描かれていたが、本作で描かれるのは「美しいまま壊れていく異国人妻の姿」(帯文より)だ。

夫が姿を消し、精神を病んでいく女性の姿。しかしその画面から受ける印象は、やはり前作と同じく“強さ”である。感情の切迫が絵物語として立ちのぼってくる。
とにかくペンの力がすごい。のびのびとした描線と造形の世界でありつつ、それを読者に見せる描法と構成についてはきわめて技術的、推敲を重ねただろうものだ。“大胆にして繊細”が技術と才能として発揮されたマンガとは、これほど豊かでおもしろく、貴重なものなのだ。

物語は疾走し爆発し静謐を見せ、終わる。この“終わる”点が、作者の新たな境地である。完結された物語の中にあった光景、それに人は何かを見るか、感じるのか。瞬間であっても「結末」とは無関係であっても、人が生きた中に人の思いがゆえにあったそれには意味がある。私にとってそれは業田良家自虐の詩』にも通ずる光景として読めた。
自虐の詩 (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)
加えて言うと『ハウアーユー?』、装丁がむちゃくちゃカッコいいです。きまってんなぁ。