『好きでいっぱい▽』

好きでいっぱい (プラザCOMIX)

好きでいっぱい (プラザCOMIX)

無性に田中ユタカエロマンガに癒されたくなる、そんな日もあるのですよ。というわけで『好きでいっぱい▽』である。セックスは描かれるけれども、成年指定まではいかない描写なので大丈夫。(何が。)成年コミック扱いだった旧作も再出版の際に指定外されたりしてるし。描写の過激さを旨とするわけではない、そんな作風。

タイトル通り、なんだよなー本当に。短編集で、どの作品でも違う男女が出てきて、セックスして、愛を確かめ合う、ラブラブ。それらがちゃんとハッピーエンド、あたたかな光景、幸福な瞬間に至る、その鉄板なおはなしぶりにじんとくる。「好き」「愛してる」という言葉に泣けてくる。ぶっちゃけこれじゃあヌケないよ!(ごめんなさい。)
田中ユタカ作品では、近年『初愛』も巻を重ねています。『初愛』も『好きでいっぱい▽』と同様の構成をとったエロマンガであるけれど、あれはもう「愛」の描写を追求し続けて、えらい領域になってしまいました。男が死んだ恋人との逢瀬を回想する、という内容の話まである。それはもちろん田中ユタカの作家性、情熱ゆえで、ファンたる私が好きな一面では間違いなくあるのだけれど、でも!エロマンガは!甘いのが好きなんです僕は!ポプリクラブとか。(やめなさい。)
で実際、昔の田中ユタカ作品はその“甘さ”を描くことに情熱が注ぎ込まれていたのです。その心音と体熱をともなう幸福な光景の固まりが帰ってきたぞ!と私は本作を読んで思ったのでありました。喜びました。これもまた、田中ユタカの覚悟と共にある「甘さ」「幸福」なのです。

ちなみに、どちらも携帯コミックを初出とする『初愛』と『好きでいっぱい▽』の作風の違いについては、前者がコマ表示、後者がページビューであることの影響も大きい、と私は考える。個体に迫る、瞬間の絵としての激情と、ロングショット、流れる時間の描写としての幸福。