『カツシン』1

カツシン~さみしがりやの天才~ 1 (バンチコミックス)

カツシン~さみしがりやの天才~ 1 (バンチコミックス)

吉本浩二『カツシン』1巻。座頭市で有名な往年の名優・勝新太郎の人物像を描くドキュメント漫画。

ブラック・ジャック創作秘話』で描かれた手塚治虫像が実直な職業人≒ハードワーカーだったのに比べると、こちらで描かれる勝新太郎像は豪放磊落な芸術家“肌”たる人物です。いわば自由人で、そのイメージが世間にも共有されていた。そこにあった苦悩も描く、という構成になっています。画家・バルテュスとの共鳴はおもしろいエピソード。外務大臣にかけ合って保釈中の人間を海外に招く、て(笑)。
『BJ創作秘話』は手塚治虫史であると同時に、日本マンガのいち時代を証言する作品でもありえました。それはもちろん、作り手も読み手も作品の元になる人物に象徴される、マンガという表現への愛と業を、その人物と同じく抱えているからこそ獲得できた内実でもありました。
その迫力を本作もまとえるか、となるとやや厳しいかもしれない。それとはまた別の形での“伝説”、リアルを見せてくれることを期待しております。作者の動機となった、「スター」への目線として。

スタッフとのうちあげで、すき焼きと卵をご飯にぶっかけてかきこむカツシン。こういうチャーミングなオッサン像に満ちてるのよね。