『のちのちのシトロン』2

異性に変身する少女と少年の恋模様を描いた、天乃タカ『のちのちのシトロン』2巻(完結巻)。月刊プリンセス連載、秋田書店だ!
魔女マリー 上巻 (ビームコミックス)
天乃タカについては、ハルタ連載の『魔女マリー』で本当にびっくりしまして。ゴシックホラーな世界観で読ませる、感情描写の冴えがすばらしかった。ファンタジーであることの力を見ました。ある種古典的な「少女漫画」の再演ぶりに、すっかり魅了された。
『のちのちのシトロン』は現代劇ですが、女の子が強くてカッコいい男の子に変身!という設定のメルヘンでありファンタジーです。少女誌のノリに近いコミカルさ。そんな中、恋に悩んだりするわけですよ、女の子の外見に変身した男の子へのそれに、男の子の外見に変身して女の子の心をもってして、という感じに。

ただまあトランスセクシャル的な要素はあまり感じない。むしろ幼児性、「かわいい」の強調として読ませるような。それこそ“おはなし”ならではの切迫感をもって描かれる少年少女の恋と障害で、でもハッピーエンドを期待できるラブコメ空間なのです。好きな世界です。
天乃タカの絵は決して今風とはいえないものですが、この人達(コンビ作家です)は自分が描く世界をよく理解している。ともすればレトロに見えるその絵が、構成にあわせて効果的に使いこなされる。この点はうまいです、この作者ならではのおもしろさです。

あとすいません、俺、タイトルの意味が最後までわかりませんでした…。(ひどいシメ)



※なんだかおセンチなマンガ感想記事が続いてますが、蔵書大量処分の必要性に迫られ、心情的にアレなのであります。できる時にメモリアル化しとこう、言祝いでおこう、という気分なのです。