越智善彦『ドロイどん』(単行本)

当ブログでも長期間にわたり愛を叫んできました“週刊1ページ連載セリフ無しマンガ”、越智善彦『ドロイどん』の単行本がついに発売されました。

とりあえず、電子書籍版での作家名が軒並み越智「義」彦と誤記されてるのをなんとかしてくれ〜。(なぜかコミックナタリー新刊情報ページでも誤記。)




私は今回、特典ペーパーがつく、セブンイレブンで受け取れば送料無料、ということでセブンネット通販を利用しました。
配送メールで、発売日の朝8時に受け取れる!と知って意気揚々だったんですが、開封したら裏表紙にバーコードシールべったり貼ってあってげんなり。いや、きれいにはがせましたけどね。商品の扱いとしてちょっとなあ、という部分で。そういうもんなのか。



はい、読みましたよ。すばらしい、たまらない、今年のベストワン候補だ!(※ファン発言)
というわけで以下、「ここが好き!」というデレポイントの羅列です。


  • 装丁が好き!

ドロイどん (電撃コミックスEX)
正直、最初にネット上でこの装丁見た時は「直球過ぎね?(≒地味じゃね?)」と思いました。しかし、実物大だとディティールまでの描き込みが見え、その上でこうあること自体見得を切っているのだな、責めの装丁なのだ、と理解しました。非常にいい感じです。
そして、ひっくり返した時の裏表紙!これはカッコいいですよ。アニメ絵・デフォルメ絵を独自の絵柄に昇華して描ける、という上手い絵です。ぜひ実物を手に取って見ていただきたい。
読み終えたらカバーを外して、中の表紙絵の確認もお忘れなく。構図という要素を使ったトリック的コミカル描写。やっぱり漫画という「絵」を使いこなせる作家さんなんですわ。その点が、すごく好き。


  • 描き下ろしが好き!

まず表紙めくると目につくのが、表紙折り返しの著者近影イラストもとい、とある四字熟語。そう、チャレンジなのであります、この作品形態は。だからこそ売れてほしい、このおもしろさも受け入れられてほしい。これは作家のファンとしてではなく、マンガ好きとしてそう思います。
左にはカラー扉絵。プロローグの光景。めくると著者コメント。サイレント形式は編集者からの依頼だったのか。いい化学反応起こしてくれたもんだ。というわけで、本編開始です。


  • 絵と話と世界観と構成技術が好き!

さんざっぱら述べてきたので省略
(※当ブログ記事の「ドロイどん」検索結果)


  • 密度が好き!

この単行本一冊のページ数は、奥付けまでふくめて130ページ。一般的な週刊連載の作品ならば、約2ヶ月分にあたる“分量”である。
しかし執筆期間としてはその7倍にあたる、2年以上をかけてようやく一冊の本として出されたこの作品は「濃い」。密度が高い。それは描き込みという、分かりやすい線の分量では必ずしもない(それが過ぎると絵柄が死んでしまう、というのもあるけれど)。一枚絵として、絵の連続として、見て読んだ時に魅力と面白さ感じさせる、工夫と技術の駆使ぶりである。
コマ毎にアングルを変える、オノマトペの質感を使い分ける、読者の視線の流れを意識して絵を配置する。約20年の作家としてのキャリアを週刊1ページ連載に注ぎ込む、というのはこういう表現なのだ。作家としての才能と熱意とは、たとえばこういう執筆姿勢を言うのだ。そのクオリティとキャパシティ、深読みしようとすればいくらでもできる、という側面を利用させていただいたのが当ブログの言及記事群である。愛あればこそだとはいえ。
実際、私のように連載全話を追っていたわけではなく、いきなり単行本から入る読者はどう感じられるだろう。いちいち絵と内容を堪能していたら、えらいことになると思われるが。なんせ“2年分”である。初読時はするすると世界観とキャラクターを楽しんでいただき、再読時にじっくりと絵と巧さを味わっていただく、というのが理想的かもしれない。


  • お嬢ちゃんかわいい!好き!

表紙に並ぶ面々のうち、左から二番目の女の子。この子がかわいいんだ。
主人公格である二人(ひなた&ドロイどん)が、ほのぼの・ゼロ座標という役割にある意味縛られているのに対し、この子はトラブルメーカーとして生き生きと暴れ回ります。作品をかき回してくれるいたずらっ子です。かわいい。




こんな所ですかね。くり返しますが、本当に多くの人の目に触れてほしい、「メジャー」に手の届く作品だと思ってます。読んでいて楽しい、その価値を深い技術により味あわせてくれる、すてきな“ほのぼのマンガ”です。
ヴィオラートのアトリエ きてれつ村おこし (ブロスコミックスEX)
『ドロイどん』を気に入られた方には、同作者の『ヴィオラートのアトリエ きてれつ村おこし』(全1巻)もオススメ。ゲームのコミカライズですが、原作を知らなくても問題なく楽しめます。少女の冒険と友情が温かい目線で描かれる、フルカラーコミック。なんせ作者の他の作品は、打ち切りだったり打ち切りだったり打ち切りだったり同人誌で10年以上継続中だったりするのでな、げふんげふん。
まあそんな過去もあり、いちファンとしては、これまでがあってこその最高傑作と目する『ドロイどん』に、評価得てほしいのですよ。こんなにおもしろいんだからな!