越智善彦『ドロイどん』46〜50話

(『ドロイどん』46話より)
はい、1ページ四段構成の二段目、右端から二コマ。
右のコマで初音ミクコスプレ(?)のドロイドがひっくり返ります。この動きあらわす動線の形とかカケアミで描かれた影もいいんだけど、私が好きなのは描き文字、オノマトペです。
この「ガチャッ」という音は、ミクドロイドがひっくり返って、接地して鳴らす音なわけです。つまり絵が現す動作より、このオノマトペの登場の方が遅い。だからコマの下の方に描いてある、絵が先に視界に入るよう。また字の角度自体が、地面に這わせるような形ですね。
さらに言っておくと、上の段を端まで読んでから下に移動してきた視線が、最初に読むのがこの絵なんです。ひっくり返る動作の表現ふくめ、その下に移動する視線による効果は、より強調されます。
で、「ガチャッ」を読んでから左のコマに行くと、カメラを引いて「わしゃわしゃ わしゃわしゃ」とやっている。歩行形態なのかよ!まあ追走劇ですね。この砂煙の漫符がいい。オノマトペもここでは筆字で、その全景を見せてくるのがユーモラスです。



(『ドロイどん』47話より)
ネコを拾う場面を描写する3コマ。
絵の内容は、ひなた&ドロイどんがネコを見る→ひなたがネコを抱えて音符の絵を出す(喜ぶ)のをドロイどんが見る→「にィ〜」オノマトペ出す(鳴く)ネコを見てドロイどんが豆電球の絵を出す(対象への情動に芽生える的な)。構図は俯瞰→仰角→俯瞰で、アングル、カメラのある方向も全コマで切り替えられる。
これを読者の視線の流れという点から見ると、1コマ目で、右上のひなたと左上のドロイどんから左下のネコに流れ、そのまま2コマ目右のひなたを見て左に流れ、ネコとドロイどんを見て、3コマ目でまたネコ、ドロイどんの順に目に入る。これはそのまま、絵の現す状況の影響関係の順番でもある。
まあ何よりいちいち絵がかわいい、デフォルメぶりとその上での漫画的表現が。



(『ドロイどん』48話より)
木目の床とコンセントのある室内。ぬいぐるみ型充電コードを見て真似しようとするドロイどん、おっとあぶない!ゆっくり進んでいく中で、というやりとりのテンポがよい。「↓」。
この場面はさ、イマジナリーライン(笑)こえてるからおもしろいんですよ。マンガ表現における2Dとしての画面構成力を、映像表現のそれとごっちゃにしたらいかんよ。



(『ドロイどん』49話より)
ドロイどんが鬼で、かくれんぼ。



(『ドロイどん』50話より)
ひなた、姿を消す!



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