普段買わないマンガ雑誌も、好きな作家の連載始まったらとりあえず買ってみる性分。
ドキドキが聞こえちゃうふたりっきりの田舎道
家から中学校までは一本道。
…なのに都会からの転校生が目の前にいる!!
何を話しかけていいかわからない、あたふた通学路。
というわけで、「ウブイチャ▼ラブコメの名手が放つ新連載!!」(誌面アオリより)、かがみふみを『つうがくろ』である。
私がかがみふみをという作家にほれこんだ作品といえば、やはり『きみといると』です。高校生男女のとてつもなくピュアで純朴な恋愛がゆっくりじわじわちょっとずつ進行していく、その描写がもうほのぼのきれいです。いいファンタジーです、あったかいです、恋心の存在が。
最近のかがみ作品はラッキースケベ要素強めだったりセックスへの葛藤が主体だったりで、作者もこれらの作品について編集者主導の展開、的なコメントをしていました。それはそれでほほえましいピュアな男女の世界ではあったのだけれど、突き抜けたほほえましさ(なんだそりゃ)ではないなー、というのが当方の正直な気持ちでした。
そこにきての新連載『つうがくろ』。これはもう、私的には「待ってました!」なかがみ作品なのである。とにかくもう一話目からしておそろしくじれったい、もどかしいボーイ・ミーツ・ガールっぷりなんである、わーい。
まず連載1ページ目1コマ目の山村ぶり、カラス飛んでて道端には地蔵あって畑の脇の道を人が歩いとるわけですよ。
そして続く2コマ目、歩いてる女の子の制服姿がまあ地味、僻地リアリティ。紺色のスカートから伸びるえんじ色のジャージ、可愛げのない運動靴、緑地に白文字のネームプレート、手さげカバンの紐に腕とおしてリュックサックスタイル、頭の中は今日食べた給食のことでいっぱい、そんな少女の足元は、脇に草生えてて小石転がってる泥製のザ・あぜ道。ど田舎でござるよ。そしてこの世界を舞台にした、ここに息づくこの子の物語であるわけだよ。
上で、表紙に掲載された3行にわたるあらすじ紹介引用しましたが、とりあえず第1話はそれがすべてです。女の子が帰り道で転校生の男の子と出会い、お互いどぎまぎしつつなんとか言葉交わすまでに連載初回16ページが費やされるスローライフぶり、だがそれがいい、なわけです。
なんかもう世界として愛おしいのだ、頑張れ!(にこにこ。)というわけで、今後も楽しみです。
あ、作中の方言が佐賀弁だから、というのも大きい魅力ですね、佐賀出身の自分にとっては。佐賀出身三大マンガ家、針すなお・かがみふみを・すめらぎ琥珀。(本当かよ)
- 原作:根本ノンジ・漫画:磯本つよし『パト★ラッシュ!〜移動交番車・桃園ハナ巡査の日常〜』/事件1「移動交番車・パトラッシュ出動!!」
- グランドジャンププレミアム2014年5月号(新装刊号)掲載
磯本つよし新連載『パト★ラッシュ!』の内容は、副題とサブタイトルどおりである。(おい。)今回は原作つき。
私が初めて出会い、魅了された磯本つよし作品といえば『三代目は梅くくり!』。女子高生怪盗が主人公のSFアクション。キャラクターがかわいくて、メカや背景の描写が楽しくて、決め絵とその見せ方がカッコよかった。物語の設定やディティール、見せ場となるアクションシーンにおける、地に足着けつつ発想飛躍させたSFホラ話のエンタメぶりにワクワクした。絵も物語も世界も、おもしろかった。
近作のバイク百合漫画(!)『ガールズライド』の画力の冴えと乗り物愛もよいものです。
さて、新作『パト★ラッシュ!』は「移動交番」という車に乗る婦警さんの話である。
車にペインティングしたり。(つなぎかわいい)
事件を推理したり。(食事かわいい)
犯人を追跡したり。(箱乗りかわいい)
基本ほのぼのではあるが、活劇である。
で、追跡中のこの絵とかセンス抜群だなあ、と私なんかは思うわけですよ。状況(一部のディテール)→パトカー(追う主体)&漫符群(状況の結果)→追う対象の車、と視線が移動するコマ割りと構図。描き文字(オノマトペ)、影つきの漫符、排気煙という絵の画面上での配置。全体的な一枚絵として見た時の白と黒のバランス、美しさ。いいなー、このコマ好きだなー、と思うわけです。
作品内容としては、日常ミステリーに近いノリになりそう。その辺の生活感あるディティール描写もうまくて、これも今後が楽しみな作品です。
未来は続く!