『週刊少年ガール』1、『賢い犬リリエンタール』全4巻

積ん読消化。

週刊少年ガール(1) (講談社コミックス)

週刊少年ガール(1) (講談社コミックス)

中村ゆうひ『週刊少年ガール』1巻。ツイッター上で評判は見かけていたのだが、おもしろかった。
一話12ページのオムニバスショート構成。毎回ボーイ・ミーツ・ガールが描かれるのだが、ここで前面に出されるのがメタとしてのマンガ表現のおもしろさである。

体や台詞が変形し、行動がパターン化され地口が絵になり、とそれこそ手法としては唐沢なをき上野顕太郎のメタギャグに近い。しかし本作品では毎回その「表現」を恋愛モノとしての「エピソード」に着地させており、そのユニークさが大変心憎くて口元がゆるむわけである、かわいいなあちくしょう(キュン)。
帯文に「SFラブコメ」とあるが、この作品はサイエンス・フィクションではない。しかし、マンガの文法や表現自体をいち設定として、メタな視点からいじくることで物語のおもしろさを提示する、その発想はSFマインドに近い、と思えるのだ。
ちなみに、単行本最後の見開きイラストについては「あすなひろし!」と叫んでおきたい。あすなは作品中であれを、塗り残しでやってたんだよー。



芦原大介『賢い犬リリエンタール』、ジャンプ・コミックスで全4巻。連載中の『ワールドトリガー』が、物語としての大きさと緻密さ感じさせてワクワク楽しませてくれているし、増刷された前作にも触れておこうかな、と増税前にまとめ買いしておいた。
結論、大傑作じゃないですかー!そりゃこれ読んだ読者は作者の次回作に期待するわな、間違いなく。
心を具現化する能力を持つ喋る犬・リリエンタールと、家族と友達と謎の組織とによるほのぼのホームドラマ。表紙の絵柄に象徴されるような、のんびり温かなテイストを基本としながら、アイディアストーリーとしての冴えと上手さも随所に感じられて楽しいのう楽しいのう、と読んでいたら、終盤で度肝を抜かれた。
『リリエンタール』の週刊少年ジャンプ連載で全4巻、という概要を聞けば、ああ打ち切り作品なのか、と思われるのは仕方ない、前例は枚挙にいとまがない。しかしこの『賢い犬リリエンタール』は、それでいて完成された作品だ。全32回の連載に、無駄な話が一つもないのである。ラストバトルにおいて、それまでに単体の読み応えあるエピソードとして語られたあらゆる要素が一挙に伏線として立ち上がり、収束し、全4巻が一編の物語として、最期にどでかいカタルシス決めてくる。
俺もう泣いてましたもん、最後の方。うわーお前らみんな意味あったんだな愛おしいよー、みたいな感じで。思い出ボム集中放火、てか一気読みでこれ味わっちゃったんだもんなあ。本当、ひさびさに強烈な読書体験でした。すばらしかったよ。

写真はテレビ番組のキャラ・魔女カナリーナ様のかわいいツンデレぶり。