ETV放送・小林カツ代追悼番組、他

  • 「ありがとう、ごちそうさま〜追悼・小林カツ代さん〜」
  • Eテレ、2月9日16時15分より

●先月亡くなられた、小林カツ代氏の追悼番組。テレビでの彼女の振る舞いを体現したかのような、終始明るい構成で非常に好印象。
●そもそも彼女の起こした「革命」とはどのようなものだったのか、という番組冒頭での例示。深鍋で具を炒め、上に春雨と餅を乗せて煮るとご飯(=炭水化物)になる。具をマリネにして、温かいご飯にかけるとちらし寿司になる。この簡易さ。
●ドーナツの作り方。



カツ代氏、粉砂糖をかけながら「お化粧いたしましょうね。きれいです、これがとてもね、もう使い古した油とは思えない」。
●ナレーション「実用的で簡単でおいしい。そんなレシピをカツ代さんは次々と提案してきました」。そりゃうなずくよ。
●包丁やまな板を使わず、手で野菜をちぎって直接フライパンにしきつめる。テキストではああ書いたけど、枚数どうでもいい、安いものでいい、1カップ強って書いたから好きなものは多めに入れて、と言い切る。パワフルだ。しかし続くのは、「家庭料理って臨機応変よ〜」という言葉。そう、これが生身の現実である。テレビの中のその映像が、日常を生きる力として伝わるのだ。
●カレーパンは、食パンを麺棒でのばして具を乗せ、小麦粉を水でといた糊で接着して揚げればよい。グラタンは、深鍋で具とマカロニを牛乳で煮ればよい。ワンタンは、具を煮てワンタンの皮を散らせばよい。料理研究家・カツ代氏の「料理って科学なんだ」という言葉は、すなわち合理化でもある。
●「忙しい人のために夏休みの子どものおひる」というテーマでは、手書きのメッセージカードをつけよう、と告げる。つけ合わせの野菜として、二つに切ったきゅうりと味噌を出し、手がこんでなくていいから「野菜っていうのはいつもついてるんだと、子ども達に思わせたい」と語る。家庭料理としての思想、愛情はつらぬかれているわけだ。
●「20分で晩ごはん」というリアルタイム進行、アナウンサーなしで一人で作る実演企画も。フルーツサラダはマヨネーズと砂糖でOK。「マヨネーズでした、なんて言わないでいいですよ。」ケチャップをフライパンにドバー。「家庭でわざわざ量ることもないじゃありませんか。」「ケチャップの量は味をみて、最後に足せばいいんですね。」まな板を極力使わない、使っても洗わない。「平気でこんなお醤油をふかないでするのかと。ね。いいんです、どうせお醤油かけるんだから。」これは見ていて楽しいよ。料理ができていく様が、そのドキュメンタリーが。
●シニア男性の料理教室で、牛丼をふるまう姿。女子少年院でおむすびを一緒に作る話。シメはいい話、という構成ではありましたが、ここまで見てきたら素直に受け入れられますな。料理を誰かに作る、共に食べる喜び。地に足の着いたそれを、楽しく我々に見せてくれた人だった。そう教えてくれる番組でした。よかった。



一昨日は他にも、「情熱大陸」で“カカオハンター”小方真弓氏の冒険家・伝道師を地で行く生きざまに驚かされたり、「ハピネスチャージプリキュア!」2話のダメな子だけど頑張ってきたひめ、それを理解し認めて励ますことのできるめぐみ、というキャラクターの優しさ浮かび上がらせる構造がすごくいいなあ、と思ったりしました。