週刊少年チャンピオン2018年48号



渡辺航弱虫ペダル』/巻頭カラー見開きで水槽といえば、『ワールドトリガー』連載再開おめでとうございます!


→あれも頭いいSF漫画だな、うん。ピエールの沈黙期間とワートリの休載期間、どっちが長いんだろ。

●中村勇志『六道の悪女たち』/アイテム使うとあっさり恋も冷めるんだな。どちらが真っ当な矯正なのかという。あれ、そもそも乱奈に使う予定だけど、当人どこいったの。

板垣巴留BEASTARS』/ビースターと主人公とのまさかの因縁。爺さんは毒手使いだったのか。目の前の共存、というのは重みある言葉だ。サブタイトルは妊娠による悲しい別離、てとこですか。

安部真弘『あつまれ!ふしぎ研究部』/ハロウィンネタ。馬鹿にしてるの?と作中人物が言ってますね、はい。

浜岡賢次『あっぱれ!浦安鉄筋家族』/ハロウィンネタ。↑と連続掲載されてると、漫画としてのクオリティの落差が。多重コスプレから普通にかわいいの見せといて画太郎メソッドからの重ねオチ(バイオレンス)。

●村岡ユウ『もういっぽん!』/センターカラー、おさげの先まで見せるべく円形を畳むという細かい芸が。

→勝利の思い出は甘美ながら、その価値であり物語が他者とも共有されるのはなお嬉しかろう。いい父ちゃんじゃないか。

●灰谷音屋『ジュニオール』/敵をあざむくにはまず、て次元でもないわな。

●ニャロメロン『ベルリンは鐘 ヤッホー!』/擬人化プリクラ、これも仮装ネタといえるか。

西修『魔入りました!入間くん』/キャラの地位の割にえらくチープな能力だけども、ベタに覚醒展開の前フリとかかなあ。その頃には迫力ある描写もできるようになるかもしれない。あと、斧の形状を描けてないのは、安部真弘が鎌の形状を描けないのと同じものを感じる(婉曲)。

●瀬口忍『ボスレノマ~「囚人リク」外伝~』/心理的弱点(カツラ)を突く。独房送りは思いやり、いやまあ。

桜井のりお『ロロッロ!』/ハロウィンネタ。むしろロボット様を人間ごときの似姿にする方が差別的なのでは?(SF的発想。)エロとアートの境目とは、それより警察の制服借りる方が普通にアウトだろうけど。それより美術部部長の格好かわいいですよね。『猫神じゃらし!』の猫キックオチを思い出す。

●いづみかつき『鬼のようなラブコメ』/なんか世界観のボーダー示すような教師キャラだな。

平川哲弘『ヒマワリ』/二次元アイドルコンテンツもCDレーベル単位で作詞・作曲家かぶりまくってるんだから、作品別に楽曲の特色どうこう言っても詮無いよな、閑話休題。理由は言おうよ。

佐藤健太郎魔法少女サイト』/こっちの親父はクズである、痔だし。(痔じゃない)

増田英二『週刊少年ハチ』/作品の背後に個人の業を認めた上で、なおそれは共鳴であると。

木々津克久『開田さんの怪談』/アーノルドッ!


コミックビーム2018年10月号

※先月号です。


  • 表紙は映画『血まみれスケバンチェーンソーRED』。連載開始時は「追悼 狩撫麻礼」の文言を携えていた『繭、纏う』が、単行本発売の報にはチェーンソー携えてるという(意味不明)。

 



三家本礼『血まみれスケバンチェーンソーreflesh』/新連載。全員復活でまさかの学園マンガ…にはならないよな。恩赦て。設定上、旧学友メンバーは未登場か。

●原百合子『繭、纏う』/めぐりあう誰か、後輩への想い。物から見守られる、というファンタジー性に、ここでは生者の思いとしてのそれが重なる。リフレインとしての絵力で見せて“夢”に畳むと。ここたまとは似て非なる(そりゃそうだ)。

おおひなたごう目玉焼きの黄身 いつつぶす?』/一口ちょうだい。やだよ(素)。相手による、という結論はまあ当然なのだが、やっぱりコミュニケーションのグルメとしてあるわけで。

桜玉吉『じわじわ』/本当、ひどい暑さだったよなー。夢の世界(卑近)。

●伊図透『銃座のウルナ』/一人の人として見られるという、その情景が温かいながらも、その身の内には。

●ハセガワM『マリアの棲む家』/また直球のホラーガジェットで来たなあ。

新井英樹『KISS 狂人、空を飛ぶ』/こちらはガジェットだけ見てると旧エヴァ劇場版みたくも見えてくるのだが。

松田洋子『父をなくす』/読み切り。エッセイ漫画、ホームの話である。意味が増える、か。

●植田りょうたろう『はなちゃんの草騒動』/読み切り。そう、野焼きは田畑としての再利用前提なのである(田舎出身)。謎ギミックの戯画化、カートゥーンっぽいノリでもあり。

三宅乱丈イムリ』/心ある者と、傀儡をかかげ続けようとする者の明暗の対比が恐ろしいほどに。しかし、権威を捨てられる者と守りたい者と見ると、その内面を育んだ運命の差という残酷さでもあるのだよな。ドネーク…。そして、両者を見つめる者の心は。

●田辺剛(原作:H. P. ラヴクラフト)『時を超える影』/おのれ、本を粗末にするとは。『恐怖の山脈にて』のダイアー教授のいる側で、地の底の者を夢見るという状況が読者にとっては感慨。

上野顕太郎『夜は千の眼を持つ』/童話ギャグと見せてSF、たぶん。

●倖田青空『外出のススメ』/読み切り。老夫婦再登場。イシデ電『猫恋人』も年の差夫婦が前作から再登場、で老人と新体験というテーマでシンクロと。松田洋子の父亡くす話もあわせて読むとなあ。ビーム読者の年齢層どれくらいなんだ、しかし。

羽生生純(原案:片桐健滋、梅本竜也)『ルームロンダリング』/作者ツイートによると、このあたりから原作映画とは異なる展開だそうだが。緊迫感と抜けの描写が流石。ひとまず落着か。

●conix『青高チア部はかわいくない!』/最終回。熱がみんなを一つに、そして夏は続いてゆく。リアルで俗で、それでも熱くて面白かった。お疲れ様でした!


  • コマンタレビーマー、すげえ話だな。
  • 市橋俊介のコラムも玉吉とシンクロっぽく。

週刊少年チャンピオン2018年47号

●村岡ユウ『もういっぽん!』/新連載。「アチぃね~」から始まる最大トーナメント、ではなく女子柔道部マンガ。攻防の描写がさすが。構図・姿勢・見開き中でのコマの位置取りにより、スムーズに読ませるコマと視線の流れを留めるコマを使い分け、コマ内で描く動作の速度・範囲とリンクさせる。断ち切り・動線・キャラのポニーテールにより上段コマ左から折り返す読者の視線を誘導する。ポーズのサンプリングではなく、動きの読ませ方が構成されている。

→メイン四人の少女の性格もきっちり描き分けられて、いいスタートではないだろうか。朴訥な実力行使キャラというのもアレだが、見る分には。

夢枕獏(原案:板垣恵介、挿絵:藤田勇利亜)『ゆうえんち-バキ外伝-』/本編とそこまで時間軸重なってるのか。本編の時間が進まないというのもあるが。

板垣恵介『バキ道』/バーベルと相撲。ほうきとプロレスとの対比でもなかろうが、最大トーナメントでは相見えていたそれらを思うに。

●瀬口忍『ボスレノマ~「囚人リク」外伝~』/個人の力では劣るか。ここで数に頼ったことが、結果的にはリクと会った時のすさみぶりにまで通ずると思うとね。

●ニャロメロン『ベルリンは鐘 ヤッホー!』/しょうもない自滅ネタには弱い…。

渡辺航弱虫ペダル』/幸や不幸はもういい、どちらにも等しく価値がある、みたいな。この発想はレースにおいての真波の生命観からもきてるのだろうけど。

安部真弘『あつまれ!ふしぎ研究部』/最後まで校舎内にて話展開したら背景のパースいちいち狂いまくってて(妄想内でも)、そりゃ基本的に広さも構造も位置関係も不明な離れた建物という謎空間を舞台にするよね、と。

佐藤健太郎魔法少女サイト』/ハリガネロスなみなさんの心を埋めあわせる展開。たぶん。

浜岡賢次『あっぱれ!浦安鉄筋家族』/子供の妄想からの、現実オチなのかこれ。欄外の注ネタは、いやまあ…。

板垣巴留BEASTARS』/すわ、チェ・ゼブラか!(真・異種格闘大戦)と思ったら、ケレン味あふれる変装で世直し行脚とは。本人も楽しんでそうだな、これ。まだ社会人編始まったばかりだが、学園内から一転して草食&メスの立場の弱さが強調される描写続くのは残酷にも見える。以前のストリッパーの話もそれ前提だしな。

桜井のりお『ロロッロ!』/脱ぐなら男女平等ってことで、ええ。本命の反応…。イチカに刺さってる矢?は何。

平川哲弘『ヒマワリ』/ナンシー関も某アイドルグループについて、6人中歌の上手いのは2人だったのに片方がオートレーサーになってしまった、と書いてたけど、まあ大丈夫だったし。

西修『魔入りました!入間くん』/悪魔は自分の欲が第一、と述べた上でのこれだから、ギャラリーの薄っぺらさも一貫性ではある。あと「固く守られてる」なら“弱点”とは呼ばんのでは。

●中村勇志『六道の悪女たち』/まあそうくるよね。普通に強くなっちゃうのか。

●いづみかつき『鬼のようなラブコメ』/主人公カップルはイノセントで、周囲ができた友人という構造。

●灰谷音屋『ジュニオール』/ルーキーへの期待、にしても露骨な扱いの差。失望の代償は大きい。

●盆ノ木至『吸血鬼すぐ死ぬ』/ジョンとやさしい世界(前半は)。こうして見ると、最近のノリはリアクション芸のインフレが自分的にはきつかったんだなー、と。半田父母の善性がまぶしい。なんか最近シリアス要素ちらついてるけど、そこは無理しなくていいよ感(純粋に技量の問題として)。

増田英二『週刊少年ハチ』/あれ、話まとめに向かってる?確かにマンガ学校という環境ならではの人脈利用ではある。半田にとっての決断でもあるか。

木々津克久『開田さんの怪談』/連載再開。二重落ち漫談、もとい怪談。このディティール解説の質量が、ホラ話の発想力にも通ずるわけだよな。

●水森崇史『マウンドの太陽』/なんかドカベン世界から来たようなキャラだ。

●齋藤勁吾『アカトラ』/抜刀斎メソッドだな。

石黒正数木曜日のフルット』/強者の庇護下より安心できる場所はない、そりゃそうか。


単行本感想:『ヴィジランテ』6、『ちんちんケモケモ』2、『ボクらは魔法少年』1、『青のフラッグ』5、『繭、纏う』1

たまにはこういう記事も。


ヴィジランテ-僕のヒーローアカデミア ILLEGALS- 5 (ジャンプコミックスDIGITAL)ヴィジランテ 5 ―僕のヒーローアカデミアILLEGALS― (ジャンプコミックス)
一つの山場を越え、物語は新たな日常へ。その様変わりにおいての淡々とした、しかしある一人にとっては切実な達成。人知れず、仲間にも秘密裏に戦わねばならなかった立場と重み。タイトルに掲げられた「イリーガル(不法・非合法)」の指す、公ではなく私人としての物語である。その者にとっては、ただただいるべき場所を選び続けた結果のこれまでとこれからであり、そこに“英雄譚”を幻視してしまうこともまた周囲の、そして読者のわがままなのだよな。
内容としては、新たな局面へ向けての仕込みに幅を割かれている。新ヴィランの特殊すぎる能力についても、古橋秀之のプロットならば衝撃の理屈づけと対抗策を見せてくれるに違いない!と信じるのが昔からの読者としての身上。
あと、舞台が大阪ならばカニ!という直情的なネタ能力ぶりも好き。




  • 藤咲ユウ『ちんちんケモケモ』2巻

ちんちんケモケモ 2 (ビームコミックス)ちんちんケモケモ 2 (ビームコミックス)
1号100円のコミックビーム電子増刊「コミックビーム100」にて、とりあえず最長連載の本作。年下幼なじみが獣に憑依されてのほんのりセクシーでラブでコメ、とまあベタな萌えマンガ設定と言っていいんだけども。技巧的に読んでて楽しいのだ。まずはかわいいけどもだ。



加えて。右ページ下のコマで、主人公のメガネ男子・むいがヒロイン・譲葉(メイド服姿)に後ろからタックルされての、左ページはこうなる。

そこでの読者の視線の動きを図示すると、つまりこうである。

●1コマ目、右下から入った視線は左方向へ。背景は左に傾いた斜線、コマ枠線も下部は左に傾いており、コマ内の二人の顔の向きも、運動方向をそちらと読ませる。右ページ下部の前コマではほぼ全身見えていた二人が、左ページ上部に視線をやると顔のアップに、という点もより動的な絵と感じさせる。視界にまず入る譲葉の顔が上半分だけであることも不安定さをあおる。
●コマ内の運動方向は左下だが、読者の視線は二人の表情を追って若干右上に向かい、吹き出しへ。この髪の毛のトーンも、黒色を追う視線の流れを途切れさせない効果になっている。で、コマ左側の吹き出しが、枠線をつぶし、ページ左方向へはみ出す断ち切り。読者の視線は上部左端まで寄る。
●その下のコマを読もうと、視線が左から右に折り返して、まず目に入るのが主人公の隣に立っていた別ヒロイン・七ツ橋である。その頭部にさっき読ませた吹き出しの角と、コマの下部を重ねることで、視線を誘導。キャラの体勢もまた、折り返してきた視線がそれを追って、左上から右下方向へスムーズに流れるよう描かれている。その体勢で描くための構図がとられている。
●2コマ目は枠線なし。1コマ目が顔のアップであるのに対し、2コマ目は全体像であることもあわせて、開放感をもたらす。七ツ橋を追った視界に入るのは、次の吹き出し「お前なん…おごっ」とコマの全体像。この吹き出し中の「おごっ」と、オノマトペの「べしゃっ」が同じタイミングで“聞こえる”状況なわけである。七ツ橋と「お前なん」が2コマ目上部、むい・譲葉と「おごっ」「べしゃっ」が2コマ目下部、という絵面。
●1コマ目で傾いてたむいと譲葉は、2コマ目で倒れ込んでいる。1コマ目では左下へ向かって倒れていたのが、続く2コマ目では右下へ向かって倒れ込む、と述べると違和感ある描写になりそうなものだが(イマジナリーラインってか、笑)、この視線誘導の技巧の上で読むと、“動き”としてスムーズに認識することができる。視線の動く方向に沿って倒れ、また視線の折り返しとリンクして二人の位置関係が逆転することに、読んでいて違和感を覚えない。これが構成力であり、技術であり、見映えである。
●2コマ目(左)上部の七ツ橋と「お前なん」の“空間”と読者がそれを見る間(ま)は、倒れ込むむいと譲葉の動作とは断絶してもいる。(コマの全体像は一枚絵として見られるものだが。)そして、「おごっ」「べしゃっ」を読むのと共に、倒れる二人のまとう右下方向への動線も視界に入るわけである。また枠のない2コマ目において、下部枠線の代わりとなる3コマ目の上部枠線を右に傾けることで、1コマ目同様に運動方向をそちらと読ませる。
●2コマ目全体を左上から右下に視線で追うと、3コマ目右側から上にはみ出した吹き出しが目に入る。そのまま吹き出しを読み、3コマ目を左に追って、このページは読了。2コマ目と3コマ目におけるむいと譲葉の位置関係が同じ(体勢・構図としては別物)である点も、認識上、スムーズにつなげて読ませる効果をもたらす。
→そういうわけで。もちろん全ページにここまでの技巧が見られるわけではないのだが、作家の地力としてこういう手腕ものぞくことが私には重要なのである。構成力の確かさにより提示される、ということに弱い。表現に自覚的でありそれを工夫できる作家は、同様にそこで動かす内容についても理を捨てない。
チャンピオン連載の福地カミオ『猫神じゃらし!』も、同じ理由で好きだったなー。新人離れした確かな画面構成力で、あとケモかわいいで。あるいは、“かわいい”を描く選択肢としてのケモ娘、という同時代的帰結。
猫神じゃらし! 1 (少年チャンピオン・コミックス)





ボクらは魔法少年 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)ボクらは魔法少年 1 (ヤングジャンプコミックス)


といった雑談はさておき。元ジャンプ連載作家の描く、魔法少女もの×女装少年である。はい。
福島鉄平という作家は私にとって割と興味深い存在で、Twitter上でも何度か言及している。まず、『月・水・金はスイミング』(2011年発表読み切り)、『反省してカメダくん』(2012年発表読み切り)について。
2014年発売の単行本『アマリリス』、特に女装少年という男娼を描く表題作を読んで。
そして、本作初回の印象。

と、やたら山松ゆうきちの名を持ち出しているわけだが。つまりは山松の単行本でも口当たりいい方の『プロフェッショナル列伝』あたり、あるいは咀嚼された形だと小林まことの劇画・長谷川伸シリーズのような、キャラクター性が“(ホラ)話”の脈絡そのものに昇華される民話的たたずまい。特に初読時しびれまくった福島の2014年の読み切り『イーサン飯店の兄弟は今日も仲良し』には、それらに通ずる“おはなし”としてのイズムを強く感じたもんである。新たな民話世界の語り部であるぞと。
さて、その目で福島の新作『ボクらは魔法少年』を読んでみるとだ。どうもつかみ所ないわけだが、要は今時な属性なりメソッドなりに回収されない作品ではあるわけで。ヒーローを描くが、やることは日常のトラブル解決(犯罪者退治含む)。ヒーローの悩みを描くが、主としてそれは少5男子の自己認識。とくれば、そこで描かれるストーリーテリングも『サムライうさぎ』で初連載、『こども・おとな』まで描いた作者のこと、突飛な飛び道具設定内で、それなりにうじうじしてもちゃんと目覚めの挟まる寓話的世界でよさそうなもんだし、実際そういう面や、友達とケンカしたけど仲直り、という日常風いい話もあったりする。しかし、あくまで物語の突破力としてあるのは、魔法少年として“己のまとう「カワイイ」を讃えよ!”であり、で、その「カワイイ」も人間的本質がどうのな脈絡じゃなく、あくまで美観、あくまで“天授”なのである。(それが魔法パワーになるという動機付けは一応されるが。)
本作同様にヤングジャンプ掲載の女装ものといえば、昨年まで柴田ヨクサル原作の『プリマックス』が連載されていた。これもすごい作品なんだけども、そこにおける「カワイイ」について、柴田はインタビューでこう答えている。

――「女装した男子高校生が“カワイイの星”を目指す」というストーリーを着想するきっかけはなんだったんでしょう。



柴田:「ももいろクローバー」が爆発的に売れる前にひたすら頑張っている姿を見て、私も力をもらった時期がありまして。彼女たちの「全力でカワイイ」に挑む姿みたいなものを見ていました。
そうした自分の体験もあって、「カワイイ」という、ハッキリ説明できない、フワッとそこにあるような…人間の文化の中でも普遍的に人をくすぐるというか、怒りや憎しみとは真逆の感覚の「カワイイ」が、ある時、男子高校生(主人公のモン太)の生きる力になった、というところから『プリマックス』を思いつきました。
www.comicsync.com

普遍的な、人間の生み出す力としての「カワイイ」。これ、『ボクらは魔法少年』における概念と対極といえるのではないだろうか。その点で、ちょっと気になった場面もある。

「カワイイ自分(魔法少年)」を愛でる行為を、人としてどうか、と言われた時に、魔法少年には大事、と返してみせる。自分が作った自分のカワイイを肯定し、それが力となるプリマックスとは異なり、ヒーローたる力としてのカワイイを天授としてまとう魔法少年。そもそも本作の場合、その天授自体もすごくあっさりだし資質や資格があるのかもわからない。しかしイノセントな少年は、カワイイ女装とヒーローというその使命に燃えるのだ。あれ、その異人たる求道者感って、やっぱり山松ゆうきちなのでは?『2年D組上杉治』あたり。(そこかよ。)
そんなわけで、正直よくわからんが異色の力はあるので読み続けようとは思いました。あと、この作品の魔法少年コスチュームのフリフリ感って、個人的には弓月光みたいにファンシーやメルヘンよりもディティールというか実体っぽさが先立つ印象で、それで読めるってのはある。あえてやってるんだろうか、そこ。




  • KAITO『青のフラッグ』5巻

青のフラッグ 5 (ジャンプコミックスDIGITAL)青のフラッグ 5 (ジャンプコミックス)
いやー、ジャンプ掲載で全5巻とはいえ、KAITOの初連載『クロス・マネジ』の青春ドラマ描ききった感は本当よかった。好きでしたわ。で、ジャンプ+でのKAITOの現行連載『青のフラッグ』も同じく学園で青春で、という枠組みながら、5巻を読んで本当にびっくりしたのである。ああ、これをやろうとしてたのか、と。

5巻で中心となるキャラクターは序盤からサブキャラとして、「ウェイ系」なり「ギャル」なりとして描かれてきたマミなのであるが、彼女がすごい。“普通”であるその人を、“物語”の枠組み自体が歪ませうることを読者に見せる、その構造がすごい。その言葉と内面と生きざまが虚心坦懐にあれない世界への怒り、生きることがすなわち戦い。そして読者にとっては、マミのその抗う姿とマミに相対する側の認識、どちらもが原罪であったり業であったり同じく戦いであったりするわけだ。日常としてなあなあやれることもまた、戦いだったり救いだったり。
「ウェイ系」であり「ギャル」であるマミの行動を、この作品の主人公側──つまり“読者(の嗜好)側”──である「青春ドラマ」キャラが批判する場面がある。主人公サイドはそこで自分の偏見・先入観を“知恵”と自称して、“敵キャラ”へのレッテルなりカテゴライズなりの正当性を説くわけだが、しかしその「理解」こそが物語上のトラップだったわけだ。
だからここで、その物語に胸打たれたからといって、マミがカッコいい!好き!と言ってしまうこと自体、また違う気がするのだよな。キャラクターをお前の“理解”におさめるな、と読者に告げる為、この作品にマミがいるように思えて。それほどに読者の求める「物語」の地平の揺るがし方が強烈だった、パラダイムシフトってやつか。ピュアな主人公達の秘めた恋心という青春、とわかりやすいフックで始まったこの物語が、しかし誰にだって内面と世界はあることをレジスタンスばりに読者へ見せてくる。ある意味、キャラ萌えをゆるさないおはなしであること、カウンターカルチャーってやつか。




  • 原百合子『繭、纏う』1巻

繭、纏う 1 (ビームコミックス)繭、纏う 1 (ビームコミックス)
コミックビーム連載の次なる話題作はこれ、になるのかな。内容についてはビームの感想記事中で毎回触れているので、あらためて言うこともないのだが(ブログ内感想)。単行本買って奥付を見たら、担当編集が青木氏でちょっと驚いた。


あと、装丁がすごくよいですよね。



(了)

週刊少年チャンピオン2018年46号

板垣恵介『バキ道』/やられ役ながらも格闘スタイルにはらしさあふれる加藤だが、いつの間に異名がデンジャラスライオンからデンジャラスボーイに。相撲にも他武術に通ずる技はあると。いきなりオリバもガイア化?あと、描き手としては同じ顔で間をもたせられるのも強さの表象なのだろうか(勇次郎のあれがあるし)。



→加納は正面顔でもたせてない分、二人より劣る。個人の感想。

夢枕獏(原案:板垣恵介、挿絵:藤田勇利亜)『ゆうえんち-バキ外伝-』/時給2000円、妙にリアリティある金額。

板垣巴留BEASTARS』/やっぱり学園のメンバー出てくるとほっとする。しかし、それもルイがレゴシの食肉を隠してるからこその平穏と考えるとなあ。友人達はレゴシの前科知らない点を、セブンが盗み聞きしなかったのも悲劇の伏線になりそうで。禁断症状については、それこそゴウヒンさんの出番っぽいが。

浜岡賢次『あっぱれ!浦安鉄筋家族』/おめでとうカープ。カラー扉での涙の使い方がさすが。3年連続ですでにメタネタ感出してきてるな。エアキャッチボールの光景がなんか郷愁あっていい。

安部真弘『あつまれ!ふしぎ研究部』/ドアから部屋に入ってくる人物が、部屋の内側のドアノブ握ってるって、描いてておかしいと思わんのかな?(なんかドア中央にノブついてるし。)

西修『魔入りました!入間くん』/横からの構図しか描けない(=背景ふくむ縮尺を合わせられない、ページ・見開き単位での画面構成が作れない)のに、なんで乱戦&巨大怪獣との戦いなんて始めちゃったんだろうか…。

桜井のりお『ロロッロ!』/勉強になるなあ(棒)。

荒達哉『ハリガネサービス』/最終回。何をどう治療したんだ。ほぼシリアスなギャグとしか読んでなかった気もするが、お疲れ様でした。新章は人死に出ますかね、やっぱり。

●中村勇志『六道の悪女たち』/いや、先週のヒロインと熊どうなったんだよ。各人で別の修行って、そんなにキャラ立つかなあこいつら。

●盆ノ木至『吸血鬼死ぬ』/後付けでシリアス入れても世界観のテキトーさ目立つだけでは(素)。

●瀬口忍『ボスレノマ~「囚人リク」外伝~』/高木さんは初バトルだっけ。そうか、相撲なのか。食をもたらす万物への感謝とナルシストでは確かに相入れぬ。

平川哲弘『ヒマワリ』/作品を審査し賞金を渡し才能を探し続ける、編集者の気持ちも考えてあげてほしい…。そもそも出版社へ個人の連絡先を不必要に知らせる奴が、アイドルの自覚持ってるのかよ。

佐藤健太郎魔法少女サイト』/最後のコマがこれってのはまあ、緊張と緩和だが。

増田英二『週刊少年ハチ』/編集王にも締め切り破って周囲を犠牲にし続ける天才作家の話あったけどね。表現主義と“社会”にどう折り合いつけるかというのはなあ。そこで悩めるのも作家性と人間性、両方あればこその話だが。

石黒正数木曜日のフルット』/親知らず。SF的発想、たぶん。


  • レジェンド作品は『バビル2世』『覚悟のススメ』。
  • 次号より村岡ユウ新連載。女子柔道部か。『開田さんの怪談』も再開。