コミックビーム2018年5月号

●田辺剛(原作・H.P.ラヴクラフト)『時を超える影』/新連載。表紙と巻頭カラーからクリーチャーが映える映える。『狂気の山脈にて』からダイアー教授再登場の場面は、連載マンガらしい魅力だな。冒険譚後に一冊の本という絵で完結した前作に対し、本作では山積みの本の光景から異界が始まる点もまた。

●伊図透『銃座のウルナ』/再び銃を手に、戦争として向き合う事になるのか。チュリッカは無事でいてくれ…。自覚とそれをもって他者と向き合う描写が、どのキャラも美しいね。

●市川ラク『わたし今、トルコです。』/コミコン初開催@トルコ。人脈を駆使しての手作り感が、いかにも在野の“好き”の熱という感じ。ゲストの名前と「コミコン」で検索すると情報も出てくるな。

三家本礼『アイアン・ゴーストの少女』/生き残り&生き残らせをかけて、そこで手を組むか。敵陣突入。

上野顕太郎『夜は千の眼を持つ』/海外コミックパロディでレギュラーキャラネタ3本。いかにもなヒーローコミック文法からのリトル・ニモは不意討ちだわ。

●原百合子『繭、纏う』/もういないあの人、をめぐる物語になるのかね。不可侵だからこその偶像性というか。いわゆる百合ものを読み慣れていないので、少女漫画メソッドで見せられると新鮮だなあ、と読んでますけども。

三宅乱丈イムリ』/暴威。前回に続き、無音かつ苛烈な光景描写の凄まじさ。人を兵器にした敵に抗うその姿もまた、という像が恐ろしくも哀しく。“木”はまさかの伏線だが、アイテムとしての能力のみならず、そこに存在した情の変質という表現にもなっている点で、物語として圧巻。

新井英樹『KISS 狂人、空を飛ぶ』/戦争の戯画化、にしてもまたグロテスクな図思いつくなあ。2巻以後の単行本表紙どうなるんだか。

●conix『青高チア部はかわいくない!』/チア部への野球部保護者の対応は好感度次第、なお好かれるキャラはこういう奴、とネタのシビアさがもう。展開自体は王道スポ根なのだな、しかし。あと、言ってもらう「かわいい」のつらさはアイマスシアターデイズで学んだ。(おい)

●藤咲ユウ『ちんちんケモケモ』/出張再掲載。これは投資のつもりで単行本買ってみたのだが、おもしろかった。




→読者の視線の動き意識した上で画面構成できているいい作品ですよ、あとちょいエロハプニングラブコメかわいいだし。

●金村連(原作・麻宮騎亜)『少年怪盗ル・ブレッド』/出張再掲載。プロローグ。

●オカヤイヅミ『ものするひと』/青高チア部の方の話と微妙に重なりつつ、決定的にずれてもいるな。見開きの構図のゆがませ方すごいな。

森泉岳土『セリー』/この欠落はぞわっとくる。前作のホラーの闇よりも乾いた印象で、その為のSFという道具立てか。

やまじえびね(原作テオドール・シュトルム)『みずうみ』/最終回。見開きのイメージはじめ、この断絶をこそ描く為の企画だったのかと。描写としてははまっている。

中野シズカ『In the Garden』/目前にあるのに奥まではのぞけない、というロマン。これは私もだけども、田舎育ちの身こそ体感的に知っている光景では。

山川直人『小さな喫茶店』/最終回。お疲れ様でした。いや、今回感想の書きようがないでしょ。山川直人の描く“普通”、というエンドマーク。


  • 市橋俊介コラムはいい話なんじゃないかな、笑ったけど。
  • 奥村編集総長コラムは文化庁メディア芸術祭受賞の話題。チャンピオンは2作品だけど、こっちは3作品だ!(張り合うな)

週刊少年チャンピオン2018年22+23号

  • 当選者200人連名縫い付けタオル、俺が応募するとしたら某チャンピオンクラスタへの嫌がらせ目的だけどねえ(素)。そしてトロツキーみたく名前をはがさせてやるのさ。どうです、私以外にもいがみ合っているチャンピオン読者の皆さん。マナーぶった辞退パフォーマンス示すより、ここで一つ“戦争”というのは?(煽る煽る)



板垣巴留BEASTARS』/巻頭カラーにて受賞ラインナップがつらつらと。私が書けよと言ってた「このマンガを読め!」もある、が今まで俺順位間違って発言してたわ、すいません。/医食同源、もとい弱肉強食。ルイにとってはここが原点かつ故郷でもあるわけか。

渡辺航弱虫ペダル』/死亡フラグ…。

板垣恵介山内雪奈生『バキ外伝 疵面』/『創面』の方でギャグにおとされたキャラを、またこういう形で描くのはどういう気分なんだろう。ある意味本部的な?

西修『魔入りました!入間くん』/吸死とカラー扉でキャラが服交換コラボという企画、共通してついているのがどういうファン層で何を欲してるのか実にわかりやすいっつうか。/異世界チート俺TUEE展開も主人公一人でやらなければテンプレじゃない、わけがない。

桜井のりお『ロロッロ!』/そっちも脱がせるんだ。そして腹筋は引っぱるんだ。深く考えるのもなんだが、性欲のないロボットの方が勘違いと逆恨みでエロハプニング起こすのはSFガジェットとしてよいのでは。

●盆ノ木至『吸血鬼すぐ死ぬ』/今回は真面目に批判しておく。特定の性癖から巻き起こる状況・ハプニングを笑う事はギャグになるが、単純にその性癖自体を指差して笑う“べき”ものとして提示するのは、何であれ私には不快である。

浜岡賢次『あっぱれ!浦安鉄筋家族』/サブタイトル「からかいジョーズスピルバーグ」が不意討ちすぎる。日直だから早く行かないと、というセリフ出てくるあたり実際に読むか見るかしてるようだし。4年前にも「実は私は」から始まるサブタイトルで、ヒロインメインなコメディ回やってた作品だし。そんなわけで登校中に少年が少女を何度もおどかしますが、大オチのトリックが細かすぎてアオリで解説が入ります。そうか、からかわれたのは僕ら読者の方だったんだ(「想い出」フォーマット)。

●中村勇志『六道の悪女たち』/飴つええ。

●重本ハジメ『逆襲インフェルノ』/救われた側の改心描写も、一様でなかったり時間がかかったりブレとして見せてくるのがよい筆致。カッコいい謎動物のパーティ加入きたか。

平川哲弘『ヒマワリ』/これ系のどさ回りって、普通バックダンサーまでは同行しないんじゃないの。主人公の才能はそこなのか。

増田英二『週刊少年ハチ』/同志を見つけられた、という変化かねえ。DO YOU HAVE COMRADE?(♪SPACE LION)

佐藤タカヒロ『鮫島、最後の十五日』/ヒロイン覚醒、なのだろうか。修羅の道から引き戻す存在としての聖母というモデルも『め組の大吾』や『月下の棋士』等ありますが(マンモス西が紀子とくっつくなんて)。しかしこの作品の場合は、すでに結末しめされているわけでなあ。

荒達哉『ハリガネサービス』/主人公の存在意義が…。

●古田朋大『謀略のパンツァー』/読み切り。タイトルの真意の脱力感。この手の大げさ馬鹿ロジックネタは好みなだけに、童貞的こじらせギャグを性的存在に素で外されるオチが、ラブコメよりも哀愁強めな印象。残念ヒロインだったからじゃないぞ、たぶん。

森田将文『出陣★昆虫武将チョウソカベ!』/人は俺を見てなんかいなかったよ…(福本伸行)。矢印そっちなのか。

ハルタ 2018-MARCH volume 52

※先月号です。


  • カバーイラストは紙島育。草花の生えた女性に虫と小動物。

森薫『シャーリー・メディスン』/シリーズ読み切り。犯罪者の逃亡と潜伏、と現実に似たような事件起こっちゃってるけども。期せずパジャマパーティー状態。

●空木哲生『山を渡る-三多摩大岳部録-』/新連載。がちキャン△。ハレ的舞台(ここでは大自然)とミーティング、双方におけるコメディ調人間模様、と前連載から変わらぬ安定感で好み。初っぱなからシビアな面ものぞくあたり、ドラマとして誠実よ。

大武政夫ヒナまつり』/うれしくないドラえもんって感じだ。

佐野菜見『ミギとダリ』/坂本くんと異なり、こちらは内面ある主人公なのよな。

福島聡『バララッシュ』/男の世界。正味この手の話には『シニカル・ヒステリー・アワー』冒頭の「幼い頃のテリトリーは狭い」を連想したりもするのだが、しかしやはり、“また”人生を選んだ瞬間なのだ。明確な断絶が本来なくとも、それでも。

ゴトウユキコ『なれた手つきで ちゃんづけで』/読み切り。また意外な作家がきたな、と思ったがエロスは変わらず。ある意味『恋の門』だな。しかし浮気はいかんよ。

樫木祐人ハクメイとミコチ』/確かにこの作品における“美味しそう”の手作り感と、店前の行列に象徴される大量生産・安定供給のイメージとはそぐわないものではある。

九井諒子ダンジョン飯』/変容する夢の世界でバトル、と空間把握の描写力問われる展開。その恐怖の形を、一方通行の通路として表現するのが面白み。物語としてはキャラの内面描写、設定の示唆にあたるか。モンスターは動物名のマクラガイからきてるのか、地口ネタなのか。いい夢に置き換わる、という退治の形が絵物語的表現でほほえましい。フタ開けると浮かぶ蜃気楼という図には、アニメ版ミスター味っ子でやってた湯気の映像化連想しちゃったけど。

八十八良『不死の猟犬』/そういやこの世界観では死刑ないんだっけ、と考えると笑えてくる。

佐々大河『ふしぎの国のバード』/なんか曽田正人的な窮地で輝くキャラになってるけど、実在の人物の描き方としては舞台立てといいどうよ。今更だけど。

●設楽清人『忍ぶな!チヨちゃん』/忍法が山田風太郎路線になってる。意図せず敵方をあざむき、排除してみせたと。

近藤聡乃『U子さんの恋人』/番外編。ヒロ君がゆうこの実家(秋田県)へご挨拶。飛行機内で着席してる視界の構図があまり見覚えなくて好き。その面白いアングルは右ページ最終コマで一コマきり、次のコマ=ノドまたいで左ページ上半分の大ゴマではもう場所移動すんでる、という瞬間芸。新展開大ゴマもまた、中央下部に配置されたヒロ君とゆうこ(背面)を囲む&圧するようにゆうこ家の面々の正面図と方言オノマトペが配置され、ゆうこがコマ左下に浮かべる吹き出し「……」が読者の視界には最後に入るよう位置取りされている。

→そこからはラストまで一室の中、こたつ囲んで着座した大人五人と動き回る子供二人を描いて話が進む。子供二人のコマ毎の描写が、コマとコマの間でも絶えずアクションしていること想起させる見映えでよい。丁寧に描写することがイコール分節点を増やすだけだと思ってる“ハルタっぽい作風”(うーん)とは、こういう所が芸の差である。
/構図としても、おどおどしてる状態のヒロ君(8ページ目)は左向きでコマの右側に、ゆうこ家にとけ込んだ状態(9ページ目)では正面顔でコマ中程に、モノローグ浮かべるヒロ君の隣に座るゆうこ(10ページ目)は右向きでコマの左側に位置しており、右から左へ動く読者の視線と人物の作用関係をリンクさせた読ませ方となっている。

●加藤清志『忍のエン』/読み切り。相変わらずの異色さ。ジョジョの影響濃いという点では、『正義の殺人鬼』の不穏さにも近いんだよなあ。

中村哲也『キツネと熊の王冠』/ビールタンク内に上半身突っ込んでの掃除描写、水着サービス回の風情。体の向きが変えられないことで同じ顔の角度断続的に続く流れが、心理表現の効果にもなっている。密閉空間の内と外、とこういう構成も描けない作家は描けないのよ。そんで真逆に庭にばかでかいビニールプール置くとかいう意味不明な状況出しちゃうわけで。これも隔号連載化か。

●高江洲弥『ひつじがいっぴき』/すわ拘束=蹂躙側に回るのか少女の夢(初掲載作もそういう雰囲気だったし)、とも思ったが一線は守るのね。自壊なのか、しかし。

●井上きぬ『まだ見ぬ春の迎え方』/人魚姫といえば、田中ユタカ『人魚姫のキス』の熱すぎるあとがきですよ、ええ。

●緒方波子『ラブ考』/ホームシック(主に猫)。ある意味これはコミックビーム連載中の『猫恋人』なのでは?

●百名哲『有明の月』/シリーズ読み切り、全3話の1回目。ブラック職場と死にかけた時の回想、てのっけから重いわ。人生最大にして最強の敵めんどくさい、とは古谷実の名言なれど、それに殺されることもある、と。あと、このタイトルは『喧嘩商売』の文さんと父親のエピソード思い出しちゃうじゃんよ。

●浅井海奈『世話のかかるヤツ』/読み切り。サイレント作品。さらにバンドデシネ風の内容へ。作風割り切ったら、絵柄がきっちり構成の巧さとして機能するんだな。おもしろい。


週刊少年チャンピオン2018年21号

板垣巴留BEASTARS』/凛とした「頼まれたら断れないイヌ科」と「可愛い」(元)ビッチ。生来の属性と個人の内面を、ずらしつつ重ねつつ描写してくるのがこの作品のおもしろさだけども。共存か距離をおくかが問われるここで、あらためて女の戦いという対比。

桜井のりお『ロロッロ!』/また妹持ちの変態警官か。こっちは無反応なのが怖い、それでネコにはあれという落差も…。

●中村勇志『六道の悪女たち』/強奪品かよ!状況が好転してるのか悪化してるのかわからんぞ、これ。

佐藤健太郎魔法少女サイト』/今回、アニメのPV代わりなのでは。

●ニャロメロン『ベルリンは鐘 ヤッホー!』/勇次郎の食理論を見習え。

水島新司ドカベン ドリームトーナメント編』/捕られた明訓陣が捕り返す。おっさんから指ベロベロなめられて、ほのぼのムード漂うこの地平。浦安鉄筋家族のガキの世界にも通じる民話的ユートピアというかね。

増田英二『週刊少年ハチ』/アマとプロの差はこだわるか折り合いつけるか、といった物言いもあるけれど、要は表現者である業のアウトプットの仕方ではないかと。で、ヒロイン枠そこかい。

浜岡賢次『あっぱれ!浦安鉄筋家族』/こういうの見ると本当ドリフのコント的世界だな。勇があきれて途中退場してるけど、この前のカレー回でも勇一人が現実のプロ野球事情についてなげいて調子崩してたのよね。つまり彼女だけある種の社会性を有していると言えるかもしれん、違うかもしれん。

佐藤タカヒロ『鮫島、最後の十五日』/マコ姉の言い分はもっともなのだが、それ以上に今や、すべての外部を捨てて進む物語、という命題の方が上にきちゃってるんだよなあ。主人公にとっては三人共に女として等しくワンオブゼム、と見れないこともないわけで。

西修『魔入りました!入間くん』/アイドル編でも思ったけれども、この辺のポエムノリはマジなのか、ツッコミ待ちなのか。

木々津克久『開田さんの怪談』/作者の別作品だと、整形させて用意しそうな仕込みであるが。お嬢様なのか。

●重本ハジメ『逆襲インフェルノ』/怪力乱神、もとい元仲間か。イレギュラー性含め、うまく話転がっていくとよいのだが。

森田将文『出陣★昆虫武将チョウソカベ!』/幕間。天使の輪という概念はあるんかい。ひさびさに生き生きしてるなヒロイン。

●山本アヒル『幼なじみは全知全能』/読み切り。随分とこなれた感はある。誌面にシヴァ神モチーフが登場するのは、森田将文の前連載『王様日記』以来?(さあね)

石黒正数木曜日のフルット』/都市伝説を消すには都市伝説を以てせよ。いやいや。

コミックビーム2018年4月号

※先月号です。


  • 表紙デザインは3ヶ月周期か何かなのか。



森泉岳土『セリー』/新連載。閉鎖空間にて男と女性型アンドロイド。物語を読む人型機械といえば、古橋秀之ひさびさの新刊『百万光年のちょっと先』が実に良くてですね、はい。
百万光年のちょっと先 (ジャンプジェイブックスDIGITAL)百万光年のちょっと先 (JUMP j BOOKS)


●原百合子『繭、纏う』/これ、下着も規定品で統一されてるってことよね。髪の手入れにも規則とかあるのかしらん。

おおひなたごう目玉焼きの黄身 いつつぶす?』/味ではなくマナーという観点、と重視すべきはコミュニケーションであるのが、食マンガとしてのこの作品の特殊性。丼ではなく定食である意義という表現はなるほど。

●伊図透『銃座のウルナ』/チュリッカは自立できてるようでよかった。死者を歴史と国家の中に位置づける物言いも、ここでは戦争状態、異文化への敵視を前提としたそれだからなあ。その言葉を向けられる主人公を、ここまで物語ってきたという構造の巧さ。そして、この手の格子柄のスーツの絵を見ると、BSマンガ夜話ナニワ金融道』回で触れられていた、青木雄二の背広の描き分けについての話を思い出すのです。

羽生生純『ルームロンダリング』(原案・片桐健滋、梅本竜矢)/苦い衝突と別れ、新たな地(事故物件)へ。重い展開になりそう。3ページ目、上段に並ぶコマ内での、影(黒ベタ)を描く構図の連続による闇の広がりからの、下段横長一コマでの、落差による静寂の表現がさすが。ハンバーガー屋の名前がnackodamaldという点も、また異なる意味で羽生生作品らしさ。

衿沢世衣子『リトロリフレクター』/読み切り。宇宙をまたぐ、というロマンをはさんでの出会いと通信の情景。さわやか。天文台が舞台のマンガというと、まず浮かぶのが『Q.E.D. 証明終了』の「褪せた星図」だったりするもので(悲しい回なんだー)。

桜玉吉『指令』/読み切り。生活のローテーション描写がもう老成の風情ね。虫の死骸が変な動き見せるというのは田舎あるあるだと思うがどうか(実家が山の中)。

●conix『青高チア部はかわいくない!』/そうか、立つ舞台の規模も勝ち進むほどでかくなるんだよなあ。オチがベタなだけにひどい&突き刺さる。

中野シズカ『In the Garden』/水中、それは苦しみを消す。絵面だけならドリフのコント感もしないではない。

三家本礼『アイアン・ゴーストの少女』/ナイフ使い、てこいつは生身で直接攻撃なの?

●オカヤイヅミ『ものするひと』/こういう、日常描写を構図と構成の巧さで作品として仕立ててしまう技巧には弱いんだよなあ。正味この作品内のオノマトペには味気なさを感じないでもないのだが、内語・(聞こえる音としての)声の吹き出しによるコマ・場面の接続、声・内語・ナレーションのフォントの使い分けとその並びで効果的に読ませる回想(ついでにバスのアナウンスもまた異なるフォント)、という点での上手さを見ると、注視すべきはその落差なのだなと。

●植田りょうたろう『あらしのかたち』/読み切り。台風は子供のロマン。なんかハルタっぽい作風。

上野顕太郎『夜は千の眼を持つ』/劇画絵と漫符、もとい、劇画調であっても絵に入ると記号が漫符に見えるよ!と。

山川直人『小さな喫茶店』/あるヒロインと珈琲と。同好の士であることの希求する物語。ある意味、オタク的心性か。

イシデ電『猫恋人』/性生活と猫、わかる人にはあるあるネタなのかしらん。移動範囲の特徴というのはまああるか。

●おくやまゆか『むかしこっぷり』/未確認飛行物体と、“飛行機”の記憶。民話的ガジェットの異層というかね。


  • 市橋俊介コラムにも、真面目にならざるを得ない時がある。